「各号の一」の読み方に関する2つの説
「各号の一」の読み方には、2つの説があります。
- かくごうのいつ
- かくごうのいち
どちらの説が正しいのか、検証していきます。
法律家は「かくごうのいつ」と読む
平野敏彦・広島大学名誉教授は、次のように述べています。
「各号の一」は「かくごうのいつ」と読み慣わされている。
(平野敏彦(2019)「号と表:列記のかたち―法令用語釈義 その7―」『広島法科大学院論集 第15号』より引用)
また、法学者や弁護士が集まって作成した「法令用語日英標準対訳辞書」には、次の用語が掲載されています。
次の各号の一に該当する者(つぎのかくごうのいつにがいとうするもの)
a person falling under one of the following items(日本法令外国語訳推進会議(2019)『法令用語日英標準対訳辞書 (平成31年3月改訂版) 』210ページより引用)
久保田康介弁護士は、YouTube動画の中で軽犯罪法1条の「左の各号の一」という文言を「さのかくごうのいつ」と読み上げています。
政治家・官僚は「かくごうのいち」と読む
国会会議録検索システムで「各号の一」と発言している事例を検索しました。
そのうち、衆議院インターネット審議中継および参議院インターネット審議中継で肉声が確認できる事例は2つありました。
藤野保史・衆議院議員の発言
○藤野委員 今答弁があったとおりであります。配付資料の四の下段に当たる部分でございます。
(中略)
四十八条になりますけれども、地方入国管理官署の長は、容疑者が第三十三条各号の一に明らかに該当すると認められる場合で、かつ、その者が逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書を発付して、入国警備官に当該容疑者を収容させることができるという規定なんです。
(「第198回国会 衆議院 法務委員会会議録 第6号 平成31年3月26日」より引用。太字は筆者による。)
衆議院インターネット審議中継の動画で確認すると、「各号の一」を「かくごうのいち」と発言しています(2:12:30あたり)。
由木良彦・国土交通省総合政策局長(当時)の発言
○由木政府参考人 お答えいたします。
(中略)
このような手続を経まして事業認定庁は、申請をされました事業が土地収用法の第三条各号の一に掲げるものに関するものであること、起業者が当該事業を遂行する十分な意思と能力を有する者であること、事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること、土地を収用し又は使用する公益上の必要があるものであることの全てに適合すると判断する場合に事業認定を行うこととなっております。
(「第196回国会 衆議院 国土交通委員会会議録 第17号 平成30年5月23日」より引用。太字は筆者による。)
衆議院インターネット審議中継の動画で確認すると、「各号の一」を「かくごうのいち」と発言しています(1:08:48あたり)。
結論
結局のところ、「各号の一」を「かくごうのいつ」と読んでも「かくごうのいち」と読んでも、どちらでも構わない、ということです。
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