判例情報
- 事件番号
- 昭和39(オ)347
- 事件名
- 賃金請求
- 裁判年月日
- 昭和41年11月18日
- 法廷名
- 最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
- 判決
- 結果
- 棄却
- 判例集等巻・号・頁
- 民集 第20巻9号1845頁
- 原審裁判所名
- 大阪高等裁判所
- 原審事件番号
- 昭和36(ネ)824
- 原審裁判年月日
- 昭和38年11月20日
- 判示事項
- 無権代理人から代理行為の相手方に対し代理権の不存在を主張することが信義則上許されないとされた事例
- 裁判要旨
- 他人の代理人と称して、金銭消費貸借契約を締結するとともに、みずからその他人のため連帯保証契約を締結した者が、債権者の提起した右連帯保証債務の履行を求める訴訟において、代理権の不存在を主張して連帯保証債務の成立を否定することは、特別の事情のないかぎり、信義則上許されない。
- 参照法条
- 民法1条,民法117条,民法448条
判決文
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人山本敏雄の上告理由(1)、(2)について。
他人の代理人と称して金銭消費貸借契約を締結し、かつ、自らその他人のため連帯保証契約を締結した者が、債権者の提起した右連帯保証債務の履行を求める訴訟において、右代理権の不存在を主張し、主たる債務の成立を否定し、ひいては連帯保証債務の成立を否定することは、特別の事情のない限り、信義則上許されないものと解するのが相当である。いま、これを本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、訴外亡Dは、訴外E及びFの代理人と称して被上告人に対し金員借入の申入をなし、Eらの代理人として被上告人と金銭消費貸借契約を締結するとともに、Eらの債務につき連帯保証をする旨の契約を締結したというのであるから、Dの相続人たる上告人らが、右連帯保証債務の履行を求める本件訴訟において、被上告人に対し、Dの右代理権の不存在を主張して主たる債務の成立を否定し、さらには本件連帯保証債務の成立を否定することは許されないものというべきである。したがつて、この点に関する原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解であつて、採るをえない。
同(3)について。
記録によるも、上告人らが原審において所論消滅時効の抗弁を提出した形跡は認められないから、原判決に所論判断遺脱の違法はなく、論旨は採るをえない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 奥野 健一
裁判官 石田 和外
裁判官 色川 幸太郎
解説
本判例によれば、他人の代理人と称して、金銭消費貸借契約を締結するとともに、みずからその他人のため連帯保証契約を締結した者が、債権者の提起した当該連帯保証債務の履行を求める訴訟において、代理権の不存在を主張して連帯保証債務の成立を否定することは、特別の事情のないかぎり、信義則上許されない。
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