就業規則と法令及び労働協約との関係(労働基準法92条)について解説します。
条文
労働基準法
(法令及び労働協約との関係)
第九十二条 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
○2 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
労働基準法施行規則
第五十条 法第九十二条第二項の規定による就業規則の変更命令は、様式第十七号による文書で所轄労働基準監督署長がこれを行う。
様式第十七号(第五十条関係)(平一七厚労令二九・全改、平二八厚労令二五・一部改正)
就業規則変更命令書
事業の名称
事業の所在地
使用者職氏名右の者に対し、労働基準法第九十二条第二項の規定により、その就業規則の
中次の事項について変更すべきことを命ずる。一
二(変更を命ずる理由)
年 月 日
労働基準監督署長 ㊞
備考
一 この命令に不服がある場合には、この命令があつたことを知つた日の翌日から起算して三箇月以内に、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができる(命令があつた日から一年を経過した場合を除く。)。
二 この命令に対する取消訴訟については、国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣となる。)、この命令があつたことを知つた日の翌日から起算して六箇月以内に提起することができる(命令があつた日から一年を経過した場合を除く。)。
三 ただし、命令があつたことを知つた日の翌日から起算して三箇月以内に審査請求をした場合には、命令の取消訴訟は、その審査請求に対する裁決の送達を受けた日の翌日から起算して六箇月以内に提起しなければならない(裁決があつた日から一年を経過した場合を除く。)。
就業規則と法令及び労働協約との関係
就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない(労働基準法92条1項)。
就業規則の変更命令
行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる(労働基準法92条2項)。
就業規則の変更命令は、所轄労働基準監督署長が文書で行う(労働基準法施行規則50条)。
就業規則の変更命令は、就業規則を変更すべき義務を使用者に課すにとどまり、就業規則を変更してしまうものではない。使用者によって所要の変更手続がとられてはじめて変更されたことになる。
就業規則と他の労働規範との関係
法的効力の順位は、法令>労働協約>就業規則>労働契約の順である。
参考文献
菅野和夫(2016)『労働法(第11版)』弘文堂
公益財団法人国際人材協力機構(2018)『技能実習生の労務管理に係る各種法令の正しい理解のために』
東京都産業労働局雇用就業部労働環境課(2016)『就業規則作成の手引き』
東京労働局(2015)『明るい職場づくりのための就業規則作成の手引き』
参考ページ
労働基準法の解説記事一覧
総則
- 労働条件の基本7原則(労働憲章)
- 適用事業
- 適用除外
- 労働者と使用者の定義
労働契約
- 労働基準法違反の契約
- 契約期間等
- 労働条件の明示
- 労働者の労働契約解除権と帰郷旅費
- 賠償予定の禁止
- 前借金相殺の禁止
- 強制貯金
- 退職時等の証明
- 金品の返還
- 解雇制限
- 解雇の予告等
- 解雇予告制度の適用除外者
賃金
- 賃金の定義
- 平均賃金
- 賃金支払5原則
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- 年少者
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妊産婦、就業規則及び雑則等
- 妊産婦等
- 技能者の養成及び災害補償
就業規則
- 就業規則の作成及び届出の義務(労働基準法89条)
- 就業規則の作成の手続(労働基準法90条)
- 就業規則の制裁規定の制限(労働基準法91条)
- 就業規則と法令及び労働協約との関係(労働基準法92条)
- 就業規則と労働契約との関係(労働基準法93条、労働契約法12条)
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